護られなかった者たちへ護られなかった者たちへ 今までにも、何本かの映画を紹介してきました。 大型シネコンで公開される、人気俳優を配した豪華で手堅い話題作も良い。また、ミニシアター系で上映されるマニアックな作品にも面白さがあります。 今回は、『護られなかった者たちへ』を紹介したいと思います。あらすじなどは書きませんが、ネタバレにはなります。これから鑑賞を考えておられる方はお読みにならないでください。長い映画です(134分)、見応えのある映画です。お薦めします。ぜひ、ご覧になってください。そして、感想をまわりの方に伝えてください(ネタバレせずに伝えることは難しいですが) 制作チームが願っていることだと思います。 • • • • • 東日本大震災と生活保護を題材にした、社会派ミステリーに分類されます。原作(中山七里:宝島社)の一部をそのまま引用します。作中の主人公が最も訴えたいことであり、特別養護老人ホームに勤務する私が、強くお薦めする理由がこの文章にあるからです。 • • 護られなかった人たちへ わたしは青葉区福祉保健事務所保護第一課に勤める円山菅生という者です。わたしは生活保護を必要とされる市民のために働く者ですが、この度一身上の都合により職を辞することになるかも知れません。なので、この場を借りて皆さんに言いたかったことを残しておこうと思います。 現在の社会保障システムでは生活保護の仕組みが十全とはとても言えません。人員と予算の不足、そして何よりも支給される側の意識が成熟していないからです。不正受給の多発もそれと無関係ではありません。声の大きい者、強面のする者が生活保護費を掠め取り、昔堅気で遠慮や自立が美徳だと教え込まれた人が今日の食費にも事欠いている。それが今の現状です。そして不公平を是正するはずの福祉保健事務所職員の力はあまりのも微力なのです。最前線で働いていながら、わたしも力及ばないことが多々あり、情けなくなります。正直言って、この体たらくがいったい誰の責任で、どこをどう改革すれば解決できるかも明言できません。わたしの不甲斐なさから、まだ何人もの生活困窮者が苦境に取り残されたままです。でも、ほんのわずかですが言えることもあります。 護られなかった人たちへ。どうか声を上げてください。恥を忍んでおらず、肉親に、近隣に、可能な環境であればネットに向かって辛さを吐き出してください。何もすることがなくて部屋に閉じ籠もっていると自分がこの世に一人ぼっちでいるような気になります。でも、それは間違いです。この世は思うよりも広く、あなたのことを気にかけている人が必ず存在します。わたしも、そういう人たちに救われた1人だから断言できます。 あなたは、決して1人ぼっちではありません。もう一度、いや何度でも勇気を持って声を上げてください。不埒な者が上げる声よりも、もっと大きく、もっと図太く • • 主人公“円山菅生”を演じたのは、女優の清原果耶さん。原作では男性でしたが女性(円山幹子)に変更しています。清原さん、原作のこの部分を相当読み込んで撮影に臨まれたのだと思います。それほどまでにこの文章を体現する演技でした。清原さん、『キリンの子』鳥居歌集も読んでいるとの記事を見たことがあります。若手随一の演技派と言われる彼女です。感性を磨いているのですね。今後、ますます活躍されることだと思います。期待していますし、応援もしています。 • • • #ロングステージ #特別養護老人ホーム #介護福祉士 #護られなかった者たちへ #中山七里 #清原果耶 #longstage

2021-10-07 UPDATE

護られなかった者たちへ


今までにも、何本かの映画を紹介してきました。

大型シネコンで公開される、人気俳優を配した豪華で手堅い話題作も良い。また、ミニシアター系で上映されるマニアックな作品にも面白さがあります。

今回は、『護られなかった者たちへ』を紹介したいと思います。あらすじなどは書きませんが、ネタバレにはなります。これから鑑賞を考えておられる方はお読みにならないでください。長い映画です(134分)、見応えのある映画です。お薦めします。ぜひ、ご覧になってください。そして、感想をまわりの方に伝えてください(ネタバレせずに伝えることは難しいですが) 制作チームが願っていることだと思います。





東日本大震災と生活保護を題材にした、社会派ミステリーに分類されます。原作(中山七里:宝島社)の一部をそのまま引用します。作中の主人公が最も訴えたいことであり、特別養護老人ホームに勤務する私が、強くお薦めする理由がこの文章にあるからです。


護られなかった人たちへ
わたしは青葉区福祉保健事務所保護第一課に勤める円山菅生という者です。わたしは生活保護を必要とされる市民のために働く者ですが、この度一身上の都合により職を辞することになるかも知れません。なので、この場を借りて皆さんに言いたかったことを残しておこうと思います。

現在の社会保障システムでは生活保護の仕組みが十全とはとても言えません。人員と予算の不足、そして何よりも支給される側の意識が成熟していないからです。不正受給の多発もそれと無関係ではありません。声の大きい者、強面のする者が生活保護費を掠め取り、昔堅気で遠慮や自立が美徳だと教え込まれた人が今日の食費にも事欠いている。それが今の現状です。そして不公平を是正するはずの福祉保健事務所職員の力はあまりのも微力なのです。最前線で働いていながら、わたしも力及ばないことが多々あり、情けなくなります。正直言って、この体たらくがいったい誰の責任で、どこをどう改革すれば解決できるかも明言できません。わたしの不甲斐なさから、まだ何人もの生活困窮者が苦境に取り残されたままです。でも、ほんのわずかですが言えることもあります。

護られなかった人たちへ。どうか声を上げてください。恥を忍んでおらず、肉親に、近隣に、可能な環境であればネットに向かって辛さを吐き出してください。何もすることがなくて部屋に閉じ籠もっていると自分がこの世に一人ぼっちでいるような気になります。でも、それは間違いです。この世は思うよりも広く、あなたのことを気にかけている人が必ず存在します。わたしも、そういう人たちに救われた1人だから断言できます。

あなたは、決して1人ぼっちではありません。もう一度、いや何度でも勇気を持って声を上げてください。不埒な者が上げる声よりも、もっと大きく、もっと図太く


主人公“円山菅生”を演じたのは、女優の清原果耶さん。原作では男性でしたが女性(円山幹子)に変更しています。清原さん、原作のこの部分を相当読み込んで撮影に臨まれたのだと思います。それほどまでにこの文章を体現する演技でした。清原さん、『キリンの子』鳥居歌集も読んでいるとの記事を見たことがあります。若手随一の演技派と言われる彼女です。感性を磨いているのですね。今後、ますます活躍されることだと思います。期待していますし、応援もしています。



#ロングステージ #特別養護老人ホーム #介護福祉士 #護られなかった者たちへ #中山七里 #清原果耶 #longstage